Direction of "Iconic Branding"
PROJECT002 きぼう新聞ロゴ
 

100年先のこどもたちに届けるラブレター

Direction of "Iconic Branding"
PROJECT002 きぼう新聞ロゴ
 
100年先の
こどもたちに届ける
ラブレター
 
 

PROJECT 002

「きぼう新聞ロゴ」Iconic Branding

100年先のこどもたちに届けるラブレター
※細川編集長とのインタビューが、2019年9月10日発行「第121号」より掲載。

「100年先のこどもたちに届けるラブレター」という想いで生まれた きぼう新聞。一般的な新聞とは性格が異なり、時事ネタや政治・経済といった、いわゆる「今」を伝える新聞ではありません。 100年後、ひょっとしたらもっと先まで、こどもたちや子孫に 「残しておきたい」と思える大切な言葉や情報に出会った時、あなたはどう残しておきますか?このなんとも形容しがたいけど 「空気のようにそこにあることで人生が変わる、名もなき言葉」は、世の中にたくさんあったりします。
 
きぼう新聞をわたす画像

 
それが人から人へと渡っていくことを願い 「ラブレター」という表現でつくられた新聞。それが「きぼう新聞」です。 毎月2回発行されています。
 
そんな「きぼう新聞」の細川編集長より 5周年を迎えるにあたって「ロゴをつくりたい」とのご連絡を受け、プロジェクトがスタートしました。アイコンによるコミュニケーションのブランディングです。

100年先までつづく「こと」をどのようにアイコン化するか?

細川編集長よりお話をいただいたときは 「これはおもしろい!」と思い、僕自身もその姿を見てみたくなり、ワクワクしました。しかし、いざ取りかかってみると、これがまったく手が進まない難しさがあることに気づきます。想像していた以上に、悩みに悩んだプロジェクト。できるまでのその過程と内容をここでお伝えしたいと思います。
 
そもそも100年先までつづく「何か」を考えてデザインした経験が、これまで一度もありませんでした。そして、どういう視点でこのテーマと向き合えばよいのか、その道筋がまったく見えなかったのです。
 
きぼう新聞画像

 
100年先の価値観がどうなっているのか、どう描けばいいのだろう?このシンプルな質問に対する「答え」が僕にはなく、いわゆる「見えない世界への入口」を知ることに…。筆を取るまでに約2ヶ月ほどかかりました。細川編集長からは「すべて織田さんに任せます」と言われていたことに、ほんとうに助けられました。そうでなければ、今回のテーマに「答え」が出せなかったかもしれません。
 
とことん向き合える時間を与えてくださったことに、感謝いたします。

人間社会の価値基準は信じられないスピードで変わるもの

そこでまず、 100年前である 1919(大正8年)。この頃の人々は、どんな価値観だったのか?イメージをしてみることから始めました。携帯電話はおろかテレビも家庭にない時代です。これらを想像するだけでも、人間社会の価値基準が信じられないスピードで変わってきていることが想像できます。というか、 10年前ですら忘れている状況です。
 
10年前といえば、 2009年。iPhone3GSがでた頃。今となっては当たり前のインスタグラムも、まだ存在しておらず、 「インスタ映え」という表現は、もっと存在していません。 10年前は誰にも想像できない「キーワード」でした。
 
iPhone3GS画像

2009年はiPhone3GSが発売された年でした
 
この一点だけをみても、 「あたりまえ」という価値基準が全然違うものになっていることをわかっていただけるでしょうか?であるならば、ますます迷路です。 100年後、その時代はなにが流行っているのだろう?「スマートフォンはあるのだろうか?」などという質問カードに対して、どのように答えたらよいのだろう?もしも、このカードをめくった裏に、 100年先のこどもたちの価値観が書かれているのなら、どんな「答え」なのだろう。
 
仮にも僕にその未来を見透す超能力でもあれば、こんなに悩むことはなかったでしょう。しかし、 100年後の人びとがどんな生活様式で、価値観がどのようになっているかなんて、現時点でイメージできるわけがない、、、不可能であるという結論にたどり着きます。完全に袋小路です。この発想では前には進めない。これほど「なにもできない」という出来事は初めてでした。こうして頭を抱える2ヶ月を過ごすことになります。
 
そこでもう一度、原点に帰ることにしました。

時をこえる、本質的価値をみる

とにかく「時」への執着をなくしていく必要がありました。そこで、視点を変えて、さらに過去を遡ってみることにしました。100年以上経っても、ずっとあるもの。ここから何かの発見があるのではないかと思い、その足跡をたどることに。幸いにも日本にはたくさんの伝統・文化が残っていて、すぐに出会うことができました。
 
たとえば、千利休をはじめとする「お茶」の世界。500年以上経っても、その姿に古さを感じることがありません。その世界観は「人と宇宙」のつながりを表し、一貫した哲学と美しさで、人の心を「茶器」で表しています。ここには時をこえて、人びとが感動する「普遍」が描かれていることに、驚くばかりです。こうした発見や叡智を残された偉人たちには、もうただただ「ありがとう」。これ以上に言葉が見つかりません。彼らの歴史があってこそ、僕たち現代人は、なんの苦労もなく、発見する必要もなく、そしていつでも好きな時に学び得ることができるのです。同じDNAをもった日本人であることに、心から嬉しくなる瞬間でもあります。

黒楽茶碗イラスト
そんな彼らに触れていると、現代人の中に、これほどの偉業ができる人はいるのだろうかと思う時があります。 500年後のことも考えて「こと・もの」を謙虚につくる人たちです。現代では想像もできない責任感の中で、やっていたのではないかと推測いたします。その後の人間社会に影響を与えてしまうからです。もちろん、中には偶然の産物もあることでしょう。それは現代でも一緒かもしれません。しかし、茶碗の歴史をみれば、そのほとんどが偶然ではないことがデザインに現れています。時代とともに変化しつつも、そのどれもが真似をしていないのです。
 
もはや 500年先というのは「永遠」の別名と言ってもいい。そんな永遠に向けてプロダクトをつくるのですから、どういう視点をもって挑んでいたのでしょう。しかし、これをやっていたのが 500年前の人たちです。果てしない「本質的価値」を掴んでこそできる偉業です。
 
そんな過去から学びつつも、もう一度、原点回帰し、「情報整理」をしていきました。すると思いのほか「答え」となるものが目の前にあることに気づきます。それは「 100年先のこどもたちに届けるラブレター」という細川編集長の言葉から、 100年後も変わらない本質的価値を見いだす新聞であること。これを文字ベースで残して、読み手にイメージさせる「こと」をやってみえる。なんということでしょう。改めて細川編集長の視点のすごさに気づかされました。この点をヒアリングすると、
 
細川編集長プロフィール写真
 
 
細川編集長:あまり深くは考えていないのですが、ただ確実に言えることは、100年後にこれを渡せるのは僕ではないですからね~。その頃には、もうこの世にいないですから(笑)そういう姿勢でいますね。僕は、道の真ん中ではなく「端っこ」を歩くほうが性に合っているので。
 
と、笑いながら語るのです。なるほど。「渡せるのは僕ではない」=わたしは主役ではない。「端っこ」を歩く。主役となるのは、現代から 100年先までバトンを渡していく、いろいろな価値観をもった人たちだ。そんな人たちの手に渡っていくことを信じながら「いま」を活動しているわけだ。
 
 渡せるのは自分ではない
 主役はいろいろな価値観をもった人たち
 時をこえて人から人へ手に渡っていく
 読み手にイメージさせる本質的価値
 100年後のこどもたちへのラブレター
 
これらのキーワードの点と点がつながりはじめ、ひとつの「答え」が見えてきました。ひとそれぞれの多様さが主役となり、カラフルなアーチをえがくもの。自然現象でいえば 「虹」のような存在が、その表現に適しているのではないかということ。
 
にじのイラスト

見えているのは「文字」のみ。大切なのはそこから見えてくる景色

これが原点だと改めて気付いた時、行き詰まっていた何かが取れました。「100年」というキーワードに、あまりにこだわり過ぎていたな~と。新聞の中に、すべての「答え」が書かれているではないかと気づいた瞬間でした。ここに書かれているのは、見えるものとしては「文字」なのですが、表現しているのはその向こう側にある「景色」です。そして、現代の僕たちはこれを「こどもたち」へつなぐための、架け橋「アーチ」となる存在であること。その想いをつなぐための紙面であること。こうした経緯から、ようやくネーミングが誕生しました。
 

きぼうのアーチ」

 
ここまで来たら半分完成です。ようやくイメージ行程に入り、筆を取りました。この先のロゴにおけるエピソードは以下の冊子と同一のもので、お伝えいたします。

きぼうのアーチ

きぼうのアーチ「冊子(1)」
きぼうのアーチ「冊子(2)」
きぼうのアーチ「冊子(3)」
きぼうのアーチ「冊子(4)」

ロゴはコミュニケーションをデザインすること
「アイコニック・ブランディング -Iconic Branding-

ロゴは、一般的には「見た目のマーク」と思われがちですが、実はこのようにブランドにとっての「言葉(バーバル)」を越えたコミュニケーションのあり方をブランディングする作業と言えます。ブランドと世の中のきっかけを作り、パッと見ただけでそのメッセージが伝わる第一印象や顔となるものです。
 
近年「アイコニック・ブランディング -Iconic Branding-」という表現が、注目を集めつつあります。ブランドとしてのあり方を、どこからどのように入っても、それが一貫したアイコンでブランディングされている状態のことです。ロゴはその代表的なものではあるものの、その先にある「理念」「プロダクト」や「人」「空気」までも同じアイコンであってこそ、人はしっくりくるもの。だからこそ「本質を捉えて表現する」ということが、大切になってきます。
 
社会には、まだまだ解決すべき様々な課題があります。特に、経済というテーマこそ、本質を捉えてどのようにデザインしたら良いのか?それが問われているのが「いま」なのかもしれません。「アイコニック・ブランディング -Iconic Branding-」はこれらを包括的にデザインする作業でもあり、今回、それがとても身に染みたプロジェクトでした。
 
 
お声かけくださった細川編集長をはじめ、サポートをくださった「きぼう新聞」のスタッフの皆様へ、心から感謝いたします。ありがとうございました。
 
※細川編集長とのインタビューが、2019年9月10日発行「第121号」より掲載。
 

2019年9月10日

発行:株式会社きぼう
〒448-0805 愛知県刈谷市半城土中町2丁目28番地6 
URL:http://kiboushimbun.com
無断での複製、転用、改編、無償配布等は硬く禁じます。